『形だけのDX』から脱却する:2027年に求められるDX推進の本質と、業務プロセスを劇的に変える6つのステップ

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2026.10.20

業務プロセスの流れをホワイトボードで描き直すビジネスパーソン

クラウドやBI、生成AIを導入したのに、現場の忙しさはあまり変わらない。そんな手応えのなさを感じていないでしょうか。

ツールを増やしても成果が伸びないとき、見直すべきはツールではなく業務の流れです。デジタイゼーションとDXの違いを押さえたうえで、業務プロセスを根本から作り直すBPRの進め方を、6つのステップに沿って紹介します。

2027年のDX推進は「ツール導入」から「業務プロセス変革」の段階へ

DXに取り組むこと自体は、もはや特別なことではなくなりました。問題は、取り組みの先に何が得られているかです。

最新の公的調査をもとに、日本企業のDXがいまどこで足踏みしているのかを見ていきましょう。

ツールやAIの導入は広がったが、成果は業務効率化にとどまっている

IPAが2026年7月16日に公表した調査結果のポイントによると、何らかの形でDXに取り組む企業は8割近くにのぼります。AIの導入も大企業を中心に進み、従業員1,001人以上の企業では8割近くが導入しています。

ところが、AIの使い道は「文書・音声の要約・翻訳・校正」(82.5%)や「文書・レポートの作成(社内・社外)」(80.5%)が上位を占めました。導入効果も「業務が効率化したり迅速化した」が91.6%に達する一方、「売上や利益が向上した」は3.9%にとどまっています。

文章作成や情報収集は楽になった。自社の成果がその段階で止まっているなら、多くの日本企業と同じ地点にいると考えてよいでしょう。

出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「国内企業のDX動向・AI活用動向のポイントを公表」

効率化止まりの原因は、AIやデータが業務プロセスに組み込まれていないこと

IPAの「DX動向2025」では、日本・米国・ドイツの企業で生成AIがどう使われているかを比較しています。個人での業務利用や試験利用は3か国とも回答率が高い一方、「部署の業務プロセスに組み込まれている」は日本の回答率が低く、業務全般や全社的な活用には至っていないと分析されています。

社員がAIに質問し、その回答を手作業で業務に転記しているうちは、仕事の流れそのものは以前と変わりません。営業なら、商談の記録からCRMへの登録、案件の優先度判断までを一続きの流れとして設計して、はじめて働き方が変わります。

成果が効率化で止まるのは、AIやデータが業務の外側に置かれたままになっているからです。

出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025」

これから問われるのは「何を導入するか」ではなく「業務をどう作り替えるか」

紙の申請をWebフォームにする。Excelの集計をBIに置き換える。どちらも有効な施策ですが、それだけでは今ある仕事を速くしたにとどまります。

これからのDX推進で問われるのは、デジタル技術があることを前提に「この仕事はそもそも必要か」「もっと合理的な流れはないか」と問い直せるかどうかです。どのツールを選ぶかは、その答えが出てから考えても遅くありません。

AIの導入率を競う段階は、すでに過ぎつつあります。AIやデータを業務フローのどこにどう組み込むかが、これからの成果を左右します。

デジタイゼーションとDXの違い:どこまで業務を変えればDXといえるのか

DXの取り組みを段階で整理するときに参考になるのが、IPAによる「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「デジタルトランスフォーメーション」の3分類です。

自社の施策がどの段階にあたるのかを当てはめながら読み進めてください。

デジタイゼーション:紙をデータに置き換えても、仕事の進め方は変わらない

デジタイゼーションは、紙やアナログの情報をデジタルデータに置き換える段階です。紙の台帳をExcelに移す、書類をスキャンしてPDFで保管するといった取り組みがこれにあたります。

データがなければ分析もAI活用も始められないため、DXの土台として欠かせない段階であることは間違いありません。ただし、変わるのは情報の形式だけです。

申請書をWebフォームに変えても、上長と部長の二段階承認や管理部による転記、別システムへの再入力が残っていれば、待ち時間も二重作業も減りません。紙を使わなくなっただけで、紙の時代の手順をそのまま画面上でなぞっている状態です。

デジタライゼーション:入力・承認・連携を自動化し、業務の流れを変える

デジタライゼーションでは、デジタル技術を使って個々の業務プロセスそのものを変えていきます。ワークフローシステムで承認を電子化したり、システム同士をAPIでつないで転記をなくしたりする取り組みが代表的です。

経費精算なら、カードの利用データを自動で取り込み、社内規程の範囲内であれば自動で承認する仕組みにできます。入力と確認の手間は大きく減るでしょう。

注意したいのは、改善の範囲が一つの部署や一つの業務にとどまりやすい点です。部署ごとに最適化を進めた結果、部署と部署の間に手作業が残ってしまうことがあります。

DX:データとAIを前提に、業務そのものを作り直す

DXは、データやAIの活用を前提に、業務・組織・事業のあり方まで作り替える段階です。IPAの分類でも、組織横断や全体の業務プロセスのデジタル化、ビジネスモデルや企業文化の根本的な変革がこの段階に含まれています。

問いの立て方も変わります。申請の例でいえば、金額や条件によって承認を自動化できないか、元データから申請内容を自動で作れないか、全件の承認をやめて異常値だけを人が確認できないか。ここまで踏み込んで考えるのがDXです。

ツールを導入した時点をゴールにせず、仕事の前提を疑うところから始めましょう。

出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025」

業務プロセス変革を阻む4つの壁と、その乗り越え方

業務プロセスを作り替えようとすると、多くの企業が似たような障害にぶつかります。どこでつまずきやすいのかを先に知っておけば、対策も立てやすくなるはずです。

代表的な4つの壁と、その越え方を整理しました。

部門の壁:部署単位の改善をやめ、部門をまたぐ業務の流れで捉え直す

受注から出荷、請求、入金へと、多くの業務は複数の部署をまたいで流れていきます。それなのに、DXの施策は「営業DX」「経理DX」のように部署ごとに進められがちです。

各部署の中は効率化されても、部署間の受け渡しにはメールやExcelが残ります。IPAの「DX動向2025」でも、日本は個別の業務プロセスの最適化に取り組む割合が高く、米国とドイツは全社最適化に取り組む割合が高いという違いが示されました。

この壁を越える出発点は、業務を組織図で区切らず、顧客からの依頼が完了するまでの一連の流れとして捉え直すことです。

出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025」

システムの壁:ツールを増やす前に、どのデータをどこでつなぐかを設計する

営業はCRM、経理は会計システム、人事は勤怠管理システム。部門ごとに導入したシステムがつながっていないと、同じ顧客情報や社員情報を何度も入力することになります。CSVで書き出してExcelで加工し、別のシステムに取り込む「デジタルなのに手作業」の業務も生まれやすくなります。

解決策は、新しいシステムに置き換えることだけではありません。どのデータを正(マスタ)とするのか、どこで生まれたデータをどこへ渡すのか、どこまでリアルタイムで連携させるのか。これらを先に設計しておくことが肝心です。

ツール選びは、その後でも十分に間に合います。

人の壁:担当者にしか分からない業務のルールを明文化・標準化する

「この業務は○○さんしか分からない」という状態は、業務改革の大きな妨げです。属人化した業務には明文化されたルールがなく、システム化や自動化の前提が整っていません。

見積もりの出し方が担当者ごとに違うなら、自動化を考える前に、標準価格や値引きの権限、例外として扱う条件、承認が必要なケースを決める必要があります。

ルールを言葉にする作業は地道ですが、ここを飛ばすと、属人的な判断がそのままシステムに組み込まれてしまいます。現場の担当者に話を聞き、実際の作業を観察しながら、暗黙のルールを洗い出していきましょう。

データの壁:名称やコードの不統一を解消し、分析・AIに使える状態にする

データ活用が大切だといわれても、データの量を増やすだけでは成果は出ません。同じ取引先が部署ごとに別の名称で登録されている、商品コードの体系がシステムごとに違う、欠損や重複が多い。こうした状態のままBIやAIを導入しても、正確な分析は望めないからです。

データの壁を越えるには、データを「集める」作業と「整える」作業を分けて考える必要があります。各システムからデータを集約したうえで、表記の統一や重複の排除、コード体系の整理を行って、ようやく分析やAIに使える状態になります。

次に紹介する6つのステップでも、この2つの作業が大きな柱です。

BPRで業務プロセスを作り替える6つのステップ:「知る」から「活かす」まで

BPR(Business Process Re-engineering)とは、業務の目的にさかのぼって問い直し、プロセス全体を設計し直す考え方です。

ここでは、現状の把握から現場への定着までを「知る」「つくる」「集める」「整える」「分析する」「活かす」の6つのステップに分けて、具体的な進め方を紹介します。

知る:部署単位ではなくEnd-to-Endで現状の業務を可視化する

最初に取り組むべきは、ツールの選定ではなく、現状(As-Is)の業務を正確につかむことです。部署ごとに業務を棚卸しするのではなく、「問い合わせから契約まで」「受注から入金まで」のように、始まりから終わりまで(End-to-End)の流れで捉えましょう。非効率の多くは、部署と部署の境目に潜んでいます。

各工程では、担当者や使っているシステム、転記の有無に加えて、作業そのものにかかる「処理時間」と、次の工程に進むまでの「待ち時間」を分けて記録してください。入力は数分で終わるのに承認待ちで何日も止まっているなら、手を入れるべきは入力作業ではありません。

システムの操作ログを取得できる環境なら、プロセスマイニングで実際の業務経路を確かめる方法もあります。

つくる:ECRSで不要な業務をなくし、あるべき業務フローを描く

現状が見えたら、あるべき姿(To-Be)の業務フローを描きます。このとき役立つのが、Eliminate(なくす)、Combine(まとめる)、Rearrange(順序を入れ替える)、Simplify(簡素化する)の頭文字をとったECRSです。

大切なのは、自動化を考える前に「なくせないか」を検討することです。Excelへの転記をRPAで自動化する前に、なぜ転記が発生しているのかを確かめれば、システム連携で転記そのものが不要になるかもしれません。承認も同じで、電子化より先に、その承認が本当に必要かを問い直します。

あわせて、人が担う範囲も決めておきましょう。照合や分類などの定型処理はシステムに任せ、条件に合わないものだけを人が確認する「例外管理」に切り替えると、全件チェックの負担がなくなります。

集める:意思決定に必要なデータを部門横断でつなぐ

To-Beの業務フローが描けると、どの判断にどのデータが必要なのかがはっきりします。データ基盤の検討は、ここから始めるのが自然な順序です。

集められるデータを手当たり次第に集める必要はありません。意思決定に必要なデータから優先して集めましょう。在庫の適正化が目的なら、在庫数だけでなく、販売実績や受注残、仕入れのリードタイム、販促の予定なども組み合わせて見る必要があります。

部門ごとのシステムに散らばったデータは、API連携やETLツール、データウェアハウスなどで統合します。顧客IDや商品コードが部門間でそろっていなければ、同じ顧客を一人の顧客として分析することもできません。

整える:表記ゆれや重複を解消し、AIが使えるデータに整備する

集めたデータは、そのままでは分析に使えないことがほとんどです。「株式会社」の有無や略称の違いで同じ取引先が別々に登録されていれば、集計結果は実態とずれてしまいます。

この段階では、表記の統一、重複データの削除、欠損値の処理、コード体系の統一などを進めます。データの持ち主(オーナー)や更新の責任者、アクセスできる範囲、利用目的といったルールも、あわせて決めておきましょう。

AIに社内データを使わせるなら、いつ更新されたデータなのか、個人情報を含むかどうかといった管理も欠かせません。データの品質が低いままでは、どれほど高性能なAIを入れても期待した結果は得られないでしょう。

分析する:ダッシュボードを眺めるだけで終わらせず、判断と行動につなげる

データが整ったら、分析に進みます。分析には、何が起きたかを示す「記述」、なぜ起きたかを探る「診断」、この先を見通す「予測」、取るべき行動を示す「処方」という段階があり、後の段階ほど意思決定に直結します。

立派なダッシュボードを作っても、月次の会議で数字を眺めるだけでは業務は変わりません。分析結果を誰が、どのタイミングで、どの判断に使うのかまで決めておくことが重要です。

離職リスクの分析を例にとると、リスクの高い社員を抽出して上司に通知し、面談の内容と結果を記録して次の分析に生かす。ここまでを一つの業務として設計すれば、分析が行動につながります。

活かす:AIやAIエージェントを業務フローに組み込み、業務成果で効果を測る

最後のステップは、分析結果やAIを現場の業務に組み込むことです。業務システムとは別の画面でAIを開き、データをコピーして指示を打ち込む使い方では、AIはいつまでも業務の外側にとどまります。CRMを開けば過去の商談履歴をもとに次の打ち手が表示される、といったように、業務の中で自然にAIが働く状態を目指しましょう。

AIエージェントに業務の一部を任せる場合は、例外時の対応や承認の条件、責任の所在を事前に決めておくことが前提になります。

効果測定の方法も見直しが必要です。IPAの「DX動向2025」によると、DXの成果指標を設定している日本企業は27.4%にとどまり、米国の89.8%、ドイツの82.7%と大きな差がありました。処理時間やリードタイム、差し戻し率、粗利益など、業務成果を表す指標を決め、導入前後で比べることから始めてください。

出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025」

まとめ:ツール導入で終わらせず、業務そのものを作り替えるDX推進へ

DX推進で問われているのは、どのツールを導入するかではありません。業務の流れをどう作り替えるかです。最後に、本記事のポイントを振り返ります。

  • DXやAIの成果は業務効率化に集中しており、価値創出に結びついている企業はまだ限られています。
  • デジタイゼーションは情報の形式を変える段階で、DXは業務の前提そのものを作り直す取り組みです。
  • 部門・システム・人・データの4つの壁を越えるには、End-to-Endの視点とルールの標準化が欠かせません。
  • 「知る」から「活かす」までの6ステップは一度で終わらせず、改善のサイクルとして回し続けることが大切です。

6つのステップは、どれか一つだけを切り出しても成果につながりにくいものです。業務分析、データ基盤、BI、AIをばらばらに導入すれば、ツールが増えただけの状態に逆戻りしかねません。

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デジタルトランスフォーメーション(DX)プロジェクトを支援する「CC-Dash」を提供する株式会社クロスキャットの公式編集チームです。現場の課題解決につながるプロジェクト推進ノウハウ、DX成功事例、システム活用のポイントなど、実務で使える情報をわかりやすく発信しています。

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