攻めのDX・守りのDXとは?違いやDXを推進する流れ

はじめに
近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性があらゆる業界で認識され、企業の成長と競争力を維持するために不可欠な要素として注目されています。DXとは、デジタル技術を活用して業務プロセスやビジネスモデルを変革し、新たな価値を創出する取り組みです。しかし、DXには多様なアプローチが存在し、それをどのように実行するかによって企業が得る効果が大きく変わります。

その中でも、「攻めのDX」と「守りのDX」という2つの主要なアプローチがあります。攻めのDXは、積極的にビジネスを拡大し、新しい市場や顧客価値を創出することを目的とする一方で、守りのDXは、既存の業務プロセスを効率化し、コスト削減やリスク管理を重視するアプローチです。

本記事では、攻めのDXと守りのDXの違いや、それぞれのアプローチが持つメリットとデメリット、また成功事例を紹介しながら、企業がDXを効果的に推進するための流れを解説していきます。両者をバランスよく活用することが、持続的な成長と競争優位の確立に重要であることを確認しましょう。

第1章 攻めのDXと守りのDXの定義と違い

攻めのDXとは?

攻めのDXは、企業が積極的に新しい市場や顧客価値を創出し、競争優位を確保するための戦略的な取り組みを指します。単に既存のプロセスを効率化するのではなく、デジタル技術を駆使してまったく新しいビジネスモデルを生み出したり、新しい顧客層を開拓したりすることを目的としています。例えば、AIやビッグデータを活用して新たなビジネスチャンスを見つけ、顧客体験をパーソナライズ化することで、競争優位を確立することができます。

攻めのDXは、成長志向の強い企業がよく採用するアプローチです。スタートアップ企業や市場での地位を強化したい大手企業が積極的に攻めのDXを取り入れています。攻めのDXの大きな特徴は、スピードと柔軟性で、技術革新のスピードが速い現代において、新しいビジネスモデルをいち早く市場に投入し、消費者のニーズに応えることが企業の成功を左右します。

守りのDXとは?

一方、守りのDXは、既存の業務プロセスやビジネスモデルをデジタル技術で改善し、コスト削減やリスク管理を重視するアプローチです。守りのDXは、特に安定した運営を求める大企業や、ビジネスモデルが成熟している企業でよく採用されており、業務の自動化や効率化、サイバーセキュリティの強化といった取り組みが中心となります。

守りのDXの目的は、既存のビジネスを持続可能にし、無駄を省くことです。例えば、従来の紙ベースの業務フローをクラウド技術で電子化し、データの一元管理を行うことで、業務効率を向上させるといった事例が挙げられます。また、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を使って定型業務を自動化し、ヒューマンエラーを減らしつつ、作業時間を短縮することも一般的です。

攻めのDXと守りのDXの違い

攻めのDXと守りのDXの主な違いは、目的とアプローチの方向性にあります。

  • 目的の違い:攻めのDXは成長や新規ビジネス機会の創出を目指すのに対し、守りのDXは効率化やコスト削減、リスク管理を目的とします。
  • アプローチの違い:攻めのDXは革新と変革を重視し、新しい市場や顧客層への進出を目指します。守りのDXは、既存のプロセスをデジタル技術で最適化し、運営の安定性を追求します。
  • 効果の違い:攻めのDXは短期間での売上や利益の拡大を目指し、リスクを伴うことがあります。一方で、守りのDXは中長期的な運用コスト削減と信頼性向上に焦点を当て、リスクを最小限に抑えることができます。

第2章 攻めのDXの特徴と成功事例

攻めのDXの特徴

攻めのDXの特徴は、デジタル技術を活用して新しいビジネスモデルやサービスを開発し、成長機会を追求するアプローチにあります。企業がこのアプローチを採用する際には、既存の枠組みを超えて大胆なイノベーションを推進し、顧客に新たな価値を提供することが求められます。

以下は、攻めのDXに共通する特徴です。

  • スピードと柔軟性: 攻めのDXでは、アイデアから実行までのスピードが重要です。市場環境が急速に変化する中で、新しい技術やアイデアを迅速に実行に移すことが、競争優位を保つために不可欠です。試行錯誤を繰り返しながら、柔軟に改善を行っていくプロセスが求められます。
  • データ駆動型の意思決定: 顧客のニーズや市場の変化を的確に把握するためには、データ分析が重要です。攻めのDXでは、ビッグデータやAIを活用して、リアルタイムのデータに基づいた意思決定を行います。顧客に対してパーソナライズされた製品やサービスを提供し、競争力を高めることが可能になります。
  • 顧客中心のアプローチ: 攻めのDXでは、顧客のニーズに焦点を当てた製品やサービスの開発が重視されます。顧客体験の向上を目指し、デジタル技術を活用してより便利で効率的なソリューションを提供することが、企業の成功を支える要素となります。
  • パートナーシップの活用: 攻めのDXにおいては、他企業やスタートアップとの協業も鍵となります。特に異業種との連携やパートナーシップを通じて、新しい技術やノウハウを取り入れ、新たな市場機会を探ることが重要です。

攻めのDXの成功事例

攻めのDXを成功させた代表的な企業として、AmazonやNetflixが挙げられます。これらの企業は、ビッグデータやAIを活用し、顧客の購買行動や視聴履歴を分析して、顧客一人ひとりに最適なサービスを提供しています。

  • Amazonは、ビッグデータ分析とAIを駆使して顧客の購買パターンを予測し、商品のレコメンドを行うシステムを構築しました。このアプローチは、顧客体験を向上させ、リピート購入を促進することで売上を大幅に拡大しています。また、クラウド事業のAWS(Amazon Web Services)は、企業向けにクラウドコンピューティングのプラットフォームを提供し、新たな市場を開拓することに成功しました。
  • Netflixは、視聴者の嗜好をAIとビッグデータで分析し、個々のユーザーに最適なコンテンツをレコメンドするシステムを導入し、視聴者の満足度を向上させ、解約率を低く抑えています。また、自社制作のオリジナルコンテンツを積極的に展開することで、映画やテレビ業界における新たな市場を切り開いています。

日本国内では、楽天やメルカリが攻めのDXを積極的に推進しています。

  • 楽天は、eコマースやフィンテック、デジタル広告、モバイル通信など幅広い分野でDXを進め、新たな収益源を確立しています。特に、AIを活用したデータ分析を通じて、パーソナライズされた広告やプロモーションを提供することに成功しており、これが顧客ロイヤルティの向上と売上拡大に寄与しています。
  • メルカリは、中古品のオンラインマーケットプレイスを提供しており、シンプルで使いやすいインターフェースをデジタル技術で実現しています。また、フィンテック分野にも進出し、電子マネーサービス「メルペイ」を展開することで、顧客基盤を拡大しています。

第3章 守りのDXの特徴と成功事例

守りのDXの特徴

守りのDXは、既存の業務プロセスやインフラをデジタル技術で最適化し、効率化やコスト削減、リスク管理を重視するアプローチです。特に、安定した運営やリスクを最小限に抑えたい大企業や成熟企業が、このアプローチを選択することが多いです。守りのDXの目的は、現行のビジネスモデルを強化し、業務効率を向上させることで、持続可能な成長を促すことです。

守りのDXの特徴として、以下のポイントが挙げられます:

  • 業務プロセスの自動化
    守りのDXでは、ルーチン業務や定型作業を自動化することが主要な目的です。例えば、バックオフィスの業務効率化のために、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAIを活用して、データ入力や請求書処理、契約管理といった反復的な作業を自動化することで、ヒューマンエラーを防ぎ、作業時間を短縮し、従業員がより高度な業務に集中できるようになります。
  • コスト削減とリスク管理
    守りのDXのもう一つの重要な要素は、コスト削減です。既存のシステムをクラウドに移行することで、ハードウェアやメンテナンスのコストを削減し、システムの稼働効率を高めることができ、デジタル技術を活用してリスク管理を強化し、サイバーセキュリティの向上やコンプライアンスの厳守を推進します。守りのDXは、特に銀行や金融機関、製造業など、安定性が求められる業界で多く取り入れられています。
  • 既存システムの最適化
    守りのDXでは、すでに構築されているシステムやインフラを基盤にして、その上に新しい技術を追加することで効率化を図ります。新しい技術を導入して業務全体を刷新するのではなく、現在のフレームワークを最適化する形で改善を進め、従来の業務プロセスを維持しつつ、運用コストを低減し、業務をスムーズに進行させることができます。

守りのDXの成功事例

守りのDXを成功させた企業として、以下の事例が挙げられます。

  • 金融業界での守りのDX事例
    多くの金融機関は、守りのDXを活用して業務の効率化とリスク管理を進めています。例えば、ある大手銀行では、RPAを導入して、手動で行っていた口座管理や顧客データの処理を自動化し、従業員の負担を軽減し、ミスの削減に成功しました。また、クラウドベースのセキュリティシステムを導入して、サイバー攻撃やデータ漏洩に対するリスクを低減し、顧客情報の保護を強化しています。
  • 製造業における守りのDX事例
    製造業では、IoT(モノのインターネット)技術を活用して生産ラインをリアルタイムで監視し、機器の故障や不具合を未然に防ぐシステムが導入されています。ある自動車メーカーでは、IoTセンサーを導入し、設備の稼働状況を常時モニタリングすることで、機械の故障を予測し、計画的なメンテナンスを行うことで、予期せぬダウンタイムが減少し、保守コストを大幅に削減することに成功しています。
  • 物流業における守りのDX事例
    物流業界では、クラウド技術を導入して在庫管理や配送業務を効率化しています。ある物流企業は、クラウドベースの倉庫管理システムを導入し、全ての在庫データをリアルタイムで管理することで、在庫の過不足を防ぎ、顧客への納品を迅速化することで在庫コストを最小限に抑えながら、顧客満足度を向上させることができています。

これらの成功事例に共通するのは、既存の業務プロセスを大幅に変えることなく、デジタル技術を導入することで業務の効率化やリスクの低減を実現している点です。守りのDXは、特にコスト管理やリスク軽減を重視する企業にとって、持続可能な成長を支える重要な手法となっています。

第4章 DXを推進するための流れ

企業がDXを推進するための基本的なステップ

DXを推進する際には、以下の基本的なステップを踏むことが推奨されます。

  • 現状の評価と課題の明確化
    まず、企業は自社の現状を評価し、どの業務プロセスに改善が必要か、どの領域にDXを導入するかを明確にします。この段階では、既存のビジネスプロセスやシステムの課題を洗い出し、改善すべきポイントを特定します。攻めのDXを優先すべきか、守りのDXを導入すべきかは、企業の目標や市場環境に依存します。
  • DX戦略の策定
    次に、企業全体のDX戦略を策定します。戦略には、目指すべき方向性とDXのゴールを明確に設定する必要があります。攻めのDXであれば、新しい市場機会の創出や競争力の強化が目的となり、守りのDXであれば、業務効率化やリスク管理の強化が目標になります。戦略の段階で、必要なリソースや投資額、タイムラインを設定し、全社的なコミットメントを得ることが重要です。
  • パイロットプロジェクトの実施
    本格的な導入前に、パイロットプロジェクトを実施してDXの効果を検証します。パイロットプロジェクトは、特定の業務や部門で小規模に開始し、DXの導入効果を測定します。ここで得られた結果をもとに、DXのスコープを拡大し、全社的な展開に向けた準備を進めます。
  • 全社的な導入と継続的改善
    パイロットプロジェクトの結果を基に、全社的なDX導入を行います。DXは一度導入すれば完了するわけではなく、継続的に改善が必要です。定期的なレビューを行い、新たな技術の導入や業務プロセスの改善を繰り返すことで、DXの効果を最大化します。

攻めと守りを組み合わせた効果的なDX推進

効果的なDX推進には、攻めと守りのDXをバランスよく組み合わせることが重要です。攻めのDXによって新しい市場機会を開拓し、企業の成長を加速させる一方で、守りのDXを通じて業務の安定性を確保し、リスク管理やコスト削減を図ることが求められます。

  • 短期的な成長と長期的な安定の両立
    攻めのDXは、短期間での成長や売上拡大を目指すため、リスクを伴うことがあります。一方で、守りのDXは中長期的な視点での効率化や安定性を重視します。これらを組み合わせることで、企業は短期的な収益を確保しつつ、持続可能なビジネス基盤を構築することが可能です。
  • リソース配分の最適化
    限られたリソースをどのように配分するかも、DX推進において重要な要素です。攻めと守りのDXのバランスを取りながら、どのプロジェクトにどれだけの投資を行うかを慎重に検討し、企業の成長と安定を同時に追求することが求められます。

まとめ
DXを推進する上で、攻めのDXと守りのDXのバランスを取ることが極めて重要です。攻めのDXでは市場機会を積極的に追求し、新たな価値を創出する一方で、守りのDXでは既存業務の効率化とリスク管理を強化し、持続的な成長を目指すことが求められます。企業は自社の現状や目標に応じて、攻めと守りのDXを組み合わせた戦略を策定し、実行していくことで、競争力を維持し、将来の成功を確実なものにできるのです。

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