行政DX推進の鍵!自治体職員が直面する3つの壁(人材・予算・レガシー)と乗り越える戦略

少子高齢化や人口減少が進む中、限られた人員と財源で行政サービスを維持・向上させるため、行政DX推進は避けて通れない課題となっています。しかし、多くの自治体では「人材」「予算」「レガシーシステム」という3つの壁に直面し、思うようにDXが進まないのが現状です。本記事では、これらの壁の実態と、先進自治体の成功事例から学ぶ乗り越え方を解説します。

行政DX推進が急務とされる背景と現状

日本の行政分野では、デジタル技術を活用した業務改革が急務とされています。政府は2021年にデジタル庁を設立し、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を掲げて自治体DXを推進しています。ここでは、行政DXの定義と推進が求められる背景を整理します。

行政DXとは何か?単なる電子化との違い

行政DXとは、国や地方自治体がデジタル技術やデータを活用して、行政サービスや業務プロセス、さらには組織文化そのものを変革することを指します。

従来の電子化との違いは、変革の深さにあります。例えば「紙の申請書をPDFにする」「窓口申請をウェブ受付可能にする」といった電子化は、既存のやり方を前提とした部分的な改善に過ぎません。

一方、DXでは「この手続きは本当に必要か」「スマホだけで完結できないか」「縦割りの壁を越えてデータ連携できないか」といった視点で、手続きやサービス提供の方法自体をゼロベースで見直します。デジタル技術を前提として業務フローや住民体験を再設計する「変革」こそがDXの本質です。

人口減少と職員不足が迫る「自治体の2025年問題」

行政DX推進が急務とされる最大の理由は、日本社会の構造的課題にあります。

少子高齢化による人口減少で、自治体職員数は減少の一途をたどっています。総務省のデータによれば、過去30年間で約47万人もの職員が減少しました。特に2025年前後には団塊ジュニア世代職員の大量退職が見込まれており、「自治体の2025年問題」と呼ばれています。

一方で行政ニーズは高度化・多様化しています。頻発する自然災害への対応や複雑化する福祉サービスなど、職員一人ひとりの業務負荷は増加の一途です。このままでは従来型の行政サービスを維持することすら困難になりかねません。こうした危機感から、政府は行政DXを国家の重要課題と位置づけ、2020年12月に「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」を策定しました。

国際比較で見る日本の行政デジタル化の遅れ

日本の行政DXは近年急速に進んでいますが、国際的に見るとまだ遅れが指摘されています。2023年のOECD「デジタル政府指数」では、日本の行政デジタル化が主要先進国の中で後れを取っていることが明らかになりました。

依然として紙文書・押印・対面手続きなど非効率なアナログ業務が各所に残存し、住民や企業の利便性低下だけでなく、行政機関の生産性低下やコスト増を招いています。

もっとも、国の後押しもあり自治体側の体制整備は進んでいます。全国すべての自治体で「自治体DX推進計画」が策定済みであり、多くの自治体でデジタル担当部署やCDO(最高デジタル責任者)が設置されています。デジタル庁の「自治体DXダッシュボード」では、市区町村ごとのDX推進状況が可視化されており、取組状況を確認できます。

出典:デジタル庁「自治体DXの取組に関するダッシュボード」
https://www.digital.go.jp/resources/govdashboard/local-government-dx

自治体職員が直面する3つの壁とは

計画策定や体制整備が進む一方で、実際のDX推進には多くの障壁が存在します。総務省の調査でも「DX推進上の最大の課題は財源確保」との回答が最多であり、人材不足や組織の慣習も含めた複合的な要因がDXの進展を妨げています。ここでは、自治体DXの現場で立ちはだかる代表的な「3つの壁」について解説します。

人材の壁:深刻化するデジタル人材不足と「1人情シス」問題

DXを推進する担い手となる人材の不足は、ほぼすべての自治体で最大の壁と認識されています。

行政DXには、単にITツールの使い方を知っているだけでなく、デジタル技術で業務を変革する構想力やプロジェクトを遂行するマネジメント力を持つ高度専門人材が必要です。しかし、そのような人材は希少であり、民間企業でも奪い合いとなっています。給与体系や人事制度が硬直的な自治体が外部から確保するのは極めて困難な状況です。

また、内部職員を育成しようにも指導できる人がいない上、日々の業務に追われて研修の時間も取れないという悪循環に陥りがちです。特に小規模自治体ほど専門知識を持つ職員が不足し、情報システム担当が1人しかいない「1人情シス」の状況が多く見られます。

さらに、現場の困りごとを適切なITソリューションに結び付け、プロジェクト化する「翻訳者」がいないという問題も指摘されています。IT予算を確保しても的確なDX施策に繋げられないケースが少なくありません。

予算の壁:財源不足と単年度予算制度の制約

DX推進にはシステム導入や人材育成など継続的な投資が必要ですが、多くの自治体で財政的な制約が大きな壁となっています。

自治体予算は原則単年度会計であり、中長期にわたる大規模投資の計上がしにくい制度上の課題があります。DXの効果が現れるまでに複数年を要する場合でも、年度をまたいだ予算確保が難しく、短期で成果の出る事業が優先されがちです。

また、地方財政はそもそも厳しく、特に人口減少が進む自治体ほど歳入が減り余裕資金がありません。社会保障やインフラ維持に支出が優先され、定量効果の見えにくいDX投資は後回しになりやすいのが実情です。

小規模自治体においては構造的な問題もあります。大都市と同じような情報システムを導入しようとすると、利用人口が少ない町村ほど一人当たりコストが割高になりがちです。「うちの規模では予算に見合わない」とDXを断念するケースもあるのです。

レガシーシステムの壁:老朽化・ベンダーロックイン・縦割り文化

自治体では住民記録、税務、福祉など主要な基幹業務システムを長年にわたり個別に構築・運用してきました。その結果、独自仕様が積み重なった複雑なレガシーシステムが各地に存在します。

多くの場合、特定ベンダー(IT企業)にカスタマイズ開発を任せてきたため、システムの内部仕様がブラックボックス化し、改修やデータ連携を行うにもそのベンダーに頼らざるを得ない「ベンダーロックイン」の状態に陥っています。改修費用を高く提示されても代替手段がなく受け入れるしかない、他社の優れたサービスを導入したくても既存システムと連携できない、といった問題が生じています。

さらに、自治体組織の縦割り文化も課題です。部署ごとに業務や予算、システムが最適化されてきた経緯から、部門間の壁が高くデータ共有や横断的な業務改革が進みにくい状況があります。「前例踏襲主義」や「失敗を嫌う文化」も根強く、新しい技術の導入や抜本的な業務見直しに対する心理的抵抗も大きいのが実態です。

3つの壁を乗り越える戦略と先進自治体の成功事例

3つの壁は確かに高いものですが、先進的な自治体では様々な創意工夫で打開を図っています。ここでは、人材・予算・レガシーの壁を乗り越えた具体的な戦略と成功事例を紹介します。

【人材】愛媛県「チーム愛媛」に学ぶ高度デジタル人材シェアリング

人材不足に対して有効なアプローチの一つが、自治体間での人材シェアです。愛媛県では「チーム愛媛」高度デジタル人材シェアリング事業を展開しています。

この事業は、愛媛県・市町DX推進会議が主体となり、デジタルの各分野に通じた高い専門性を有する外部人材を確保し、県と20市町で共同活用する仕組みです。高度デジタル人材を単独で採用することが難しい小規模自治体でも、専門家の知見やネットワークによるサポートを受けられます。

愛媛県庁の公式サイトによれば、この事業の目的は「各自治体の人的・財政的負担を抑えながら、質の高いDXを広域的に実現すること」とされています。都道府県がハブとなり、限られた専門人材を効率的に活用するモデルとして全国的にも注目されています。

出典:愛媛県庁「令和7年度「チーム愛媛」高度デジタル人材シェアリング業務の委託に係る企画提案型プロポーザルの実施について」
https://www.pref.ehime.jp/site/nyusatsu/101801.html

【予算】北見市「書かないワンストップ窓口」に学ぶ業務改革の進め方

予算やレガシーの壁を乗り越えるには、大規模なシステム投資の前に業務改革(BPR)から始めることが有効です。北海道北見市の「書かないワンストップ窓口」はその好例です。

北見市では、住民が申請書に記入せずに各種手続きができ、かつ複数の窓口を回らなくても一か所で手続きが完了する仕組みを構築しました。2022年に内閣官房が主催した「夏のDigi田甲子園」では、実装部門(市)でベスト4を受賞しています。

この取組のポイントは、システム導入ありきではなく、まず職員自身が窓口を利用者目線で体験し、課題を洗い出したことにあります。内閣官房のデジ田メニューブックによれば、北見市では「体験調査を実施すれば、課題が洗い出され、認識・共有できる。そこから、どのような業務を目指していくかを考える」というプロセスを重視しました。

アナログでの業務改善から着手し、その後に地元企業と協力してシステムを構築するという「スモールスタート」の姿勢が、予算や人材の制約がある中でも成果を上げた要因といえます。

出典:内閣官房「デジ田メニューブック:書かないワンストップ窓口」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/menubook/2022_summer/0001.html

【レガシー】都城市「全手続オンライン化」に学ぶ行政手続きのデジタル化

宮崎県都城市は、行政手続きのオンライン化を積極的に推進している先進自治体です。

都城市の公式サイトによれば、同市では国が運営する「ぴったりサービス(マイナポータルのオンライン申請機能)」を活用し、令和7年1月から原則として全ての行政手続がオンラインで申請できるようになりました。従来は窓口に出向く必要のあった申請や届出などの手続を、パソコンやスマートフォンからいつでも、どこでも行うことが可能になっています。

都城市の取組が注目される理由は、既存の国の仕組み(マイナポータル)を最大限活用している点にあります。独自システムを一から構築するのではなく、国が整備した基盤を活用することで、開発コストを抑えながら全手続のオンライン化を実現しました。これは、予算の壁に悩む自治体にとって参考になるアプローチです。

出典:都城市「ぴったりサービスを活用したオンライン申請を受け付けています!」
https://www.city.miyakonojo.miyazaki.jp/soshiki/99/46929.html

まとめ:行政DX推進は「人材・予算・レガシー」の壁を乗り越えることから始まる

行政DXは、人口減少と職員不足が進む中で行政サービスを維持・向上するために不可欠な改革です。しかし、多くの自治体では「人材」「予算」「レガシーシステム」という3つの壁がDX推進の障壁となっています。

本記事で紹介した先進自治体の事例から、壁を乗り越えるためのポイントが見えてきます。

  • 人材の壁:自治体間での高度デジタル人材シェアが有効
  • 予算の壁:BPR(業務改革)から着手するスモールスタートが効果的
  • レガシーの壁:国の基盤(マイナポータル等)の活用でコストを抑えた変革が可能

行政DXは単なるICT化が目的ではなく、その先にある住民福祉の向上と持続可能な行政運営がゴールです。3つの壁は確かに高いものですが、先進自治体の知見を参考に、できるところから一歩ずつ取り組んでいくことが重要です。

解析人材育成

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DX推進を内製化する上で最初の壁となる「AI・DX人材の不足」。オンライン化が前提となり、職種・役職問わず、全社員にデジタルリテラシーが求められています。講座受講により社内のリテラシーを高め、さらに現場視点のアイデアを吸い上げ収益化につなげます

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