DX人材ギャップを埋める!「DX推進スキル標準」に基づいた理想的な組織体制の設計図

デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が企業の成長に不可欠となった今、多くの企業がDX人材の不足という壁に直面しています。本記事では、経済産業省とIPAが策定した「DX推進スキル標準」を軸に、DX人材ギャップを埋めるための組織体制づくりを解説します。

なぜ今「DX推進スキル標準」が必要なのか

日本企業のDX推進が遅れている背景には、深刻な人材不足があります。ここでは、企業が直面する課題と、その解決策として登場した「デジタルスキル標準」の概要を紹介します。

深刻化するDX人材不足と企業が抱える課題

日本企業の多くがDXへの取り組みで出遅れており、その主な原因としてDXの専門性を持った人材の不足が挙げられています。経済産業省の公式サイトでも、DXの素養や専門性を持った人材が不足していることが、企業のDX推進の遅れにつながっていると指摘されています。

人材不足の問題は単に「人が足りない」という量的な課題だけではありません。多くの企業が「自社にどのような知識・スキルを持つ人材が必要なのか特定できない」という質的な課題も抱えています。DXで何を実現したいのか、そのためにどんな人材が必要なのかが明確でなければ、採用も育成も的外れなものになってしまいます。

こうした人材ギャップを放置すれば、企業競争力の低下は避けられません。経営層から現場まで含めた企業全体でDX人材育成に取り組むことが急務となっています。

経済産業省・IPAが示した「デジタルスキル標準」の全体像

このような背景から、経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は2022年末、DX人材育成の指針として「デジタルスキル標準(DSS)」を策定・公表しました。デジタルスキル標準は2つの指針で構成されています。

DXリテラシー標準(DSS-L)

全てのビジネスパーソンを対象に、DXの基礎知識やマインドセットを示した指針です。Why・What・How・マインドの4領域で構成されています。

DX推進スキル標準(DSS-P)

本記事のテーマであり、DX推進の中核を担う専門人材の役割やスキルを定義したものです。2024年7月には生成AI活用に関する項目を追加したver.1.2が公表されています。

項目 DXリテラシー標準 DX推進スキル標準
対象者 全社員 DX推進の専門人材
目的 DXの基礎理解・意識向上 専門スキルの習得・育成
構成 4領域 5類型・15ロール

DX推進スキル標準が定義する5つの人材類型とは

DX推進スキル標準の核心は、DXを推進する人材を5つの類型に分類し、それぞれの役割と必要スキルを明確にした点にあります。ここでは各類型の特徴と求められる能力を詳しく見ていきます。

5類型・15ロールで構成されるDX人材の全体像

DX推進スキル標準では、DXを推進する主要人材を5つの類型に分類しています。さらに各類型は役割に応じて細分化され、合計15種類のロールが定義されています。

  • ビジネスアーキテクト:DX戦略の立案・推進を担うリーダー
  • デザイナー:顧客視点で製品・サービスを設計する専門家
  • データサイエンティスト:データ分析で経営判断を支援するプロ
  • ソフトウェアエンジニア:システム開発・運用を担う技術者
  • サイバーセキュリティ:デジタル環境の安全を守る専門家

ITスキル標準(ITSS)は、2002年に経済産業省が策定したIT人材のスキル体系です。IT技術者の専門性を細かく分類し、レベル別に評価する仕組みとして長く活用されてきました。一方、DX推進スキル標準は「技術」だけでなく「ビジネス変革」を重視している点が大きく異なります。

項目 ITスキル標準(ITSS) DX推進スキル標準(DSS-P)
策定年 2002年 2022年
重視する能力 IT技術の専門性 ビジネス変革力・戦略的思考
人材像 IT技術者 ビジネスとテクノロジー両面を理解する変革推進者
構成 11職種・7段階レベル 5類型・15ロール

なお、5つの類型すべてを必ずしも揃える必要はないとIPAは説明しています。自社の事業内容やDXのステージに応じて必要な人材は異なり、中小企業やDX初期段階の組織では一人が複数の役割を兼ねるケースも想定されています。

①ビジネスアーキテクト:DX戦略を描き組織を動かすリーダー

ビジネスアーキテクトは、DX推進プロジェクト全体を統括するリーダー人材です。ビジネス戦略とデジタル戦略を統合してロードマップを描き、目的設定から効果検証まで一気通貫で推進します。

関係者を巻き込み、部門横断の協働体制を構築する調整力と推進力が求められます。新規IoTサービスの立ち上げであれば、事業モデルの再構築からデジタル技術活用の戦略設計まで、各部門をリードしてDXを実現していきます。

「新規事業開発」「既存事業の高度化」「社内業務効率化」の3つのロールに細分化されています。

②デザイナー:ユーザー体験と事業価値を両立させる専門家

デザイナーは、顧客・ユーザー視点とビジネス視点を融合し、製品やサービスをデザインする人材です。単なるUIデザインに留まらず、ユーザー体験(UX)全般や事業価値の向上に貢献します。

ECサイトのUXデザイナーであれば、ユーザーが商品をスムーズに見つけて購入できるインターフェースを設計し、継続的な改善に取り組みます。顧客理解やマーケティング、課題発見力など、デザイン以外の領域の知識も重要です。

「UX/UIデザイナー」「サービスデザイナー」「グラフィックデザイナー」などに細分化されています。

③データサイエンティスト:データから経営判断を支えるプロ

データサイエンティストは、データ分析によって業務変革や新規ビジネス創出を支援する専門家です。ビジネス上の課題解決や意思決定に資するインサイトをデータから引き出します。

データの収集・加工基盤を設計・運用し、大量データからパターンや傾向を解析して予測モデルを構築します。顧客購買データを分析して個別のレコメンデーションを行い、マーケティング戦略に活かすといった取り組みが一例です。

「データエンジニア」「データアナリスト」「データビジネスストラテジスト」に分かれ、それぞれ基盤構築、高度分析、戦略策定を担います。

④ソフトウェアエンジニア:DXを実装し基盤を構築する技術者

ソフトウェアエンジニアは、システムやソフトウェアの開発・運用を担う人材です。DXのアイデアを実際のプロダクトとして実現し、企業のDX戦略に沿ったITシステム基盤を構築します。

フロントエンド/バックエンド開発、クラウド、IoT、AI技術など幅広い専門知識が求められます。自動車メーカーで車両データをリアルタイム収集・分析する車載システムを開発するといったプロジェクトが該当します。

「バックエンドエンジニア」「クラウドエンジニア」「フロントエンドエンジニア」「フィジカルコンピューティングエンジニア」などに細分化されています。

⑤サイバーセキュリティ:デジタル環境の安全を守る守護者

サイバーセキュリティは、DXによって拡大するサイバーリスクに対処し、安全なデジタル環境を維持する人材です。ビジネスのデジタル化が進むほどリスクも高まるため、DX推進には欠かせない存在です。

システム開発やクラウド導入の各段階でセキュリティ要件を定義・実装し、ネットワーク監視や脆弱性対応、社内教育などを推進します。金融機関での顧客データ保護や不正アクセス監視体制の整備などが具体例です。

「サイバーセキュリティエンジニア」と「サイバーセキュリティマネージャー」に区分され、技術面と管理面の両方から企業を守ります。

5つの人材類型に共通して求められるスキルとは

DX推進スキル標準では、5つの人材類型それぞれに専門スキルを定義する一方で、全類型に共通する基盤スキルも整理しています。ここでは共通スキルの構成と活用方法を解説します。

共通スキルリストの5カテゴリとその構成

IPAは各DX人材が具体的にどのようなスキルを身につけるべきか明確にするため、「共通スキルリスト」を定義しました。これは5つのカテゴリと12のサブカテゴリで構成されています。

カテゴリ 概要
ビジネス変革 戦略策定力、プロジェクトマネジメント、業務改革手法など
データ活用 データ分析基盤の構築、統計解析、AI活用など
テクノロジー クラウド、ネットワーク、ソフトウェア開発、IoTなど
セキュリティ サイバーセキュリティリスク評価、情報セキュリティマネジメント、暗号技術など
パーソナル マインドセット、リーダーシップ、コミュニケーション、倫理観、学習力など

DXは技術だけでなく人々のマインドセット変革が成功のカギを握るため、パーソナルスキルも他のカテゴリと同様に重視されています。

職種ごとの重点スキルと育成計画への活かし方

5つのカテゴリはDX推進人材に共通して求められる基礎能力ですが、各職種によって重要度の強弱があります。例えばビジネスアーキテクトにはビジネス変革スキルとパーソナルスキル(特にリーダーシップ)が重視される一方、データサイエンティストにはデータ活用スキルとテクノロジースキルの深い専門性が求められます。

企業はこの共通スキルリストを活用して自社DX人材のスキルマップを作成し、どのスキルを優先的に育成すべきかを明確化できます。各ロールごとに必要なスキル項目の優先度をマッピングした資料も公開されており、社内育成計画に落とし込む際の参考になります。

DXリテラシー標準では全社員に「変革を自分事化するマインド」を求めていますが、DX推進スキル標準でもパーソナルスキルとして変革への前向きな姿勢や継続学習が重視されています。専門スキルと合わせてこうした土台となる素養も鍛える必要があるでしょう。

経営層・人事・現場の3者で進めるDX人材育成の進め方

DX推進スキル標準を実際の人材戦略に活用するには、経営層・人事部門・現場担当者がそれぞれの役割を果たすことが重要です。ここでは3者それぞれの視点から、組織体制づくりのステップを解説します。

経営層が担う役割:ビジョン策定と全社への発信

経営層がまず担うべきは、DX戦略の策定にDX推進スキル標準の視点を組み込むことです。DXで達成したいビジネス目標を定め、それを推進するためにどのような役割の人材が何名程度必要かを洗い出します。

DX推進スキル標準が人材類型ごとの役割定義を提供しているため、「自社に欠けているのはデザイナーとデータサイエンティストだ」といったギャップ分析がしやすくなります。

次に、DX推進のビジョンと人材計画を全社に発信・共有します。「なぜDXに取り組むのか」「どんな組織体制で臨むのか」を明確にメッセージングすることで、社員も「DXは自分事」と捉えやすくなります。

人事部門が担う役割:人材要件の明確化と育成・採用施策の設計

経営層のビジョンが定まったら、人事部門が具体的な人材プランに落とし込みます。まず現状の社内人材構成とスキルを棚卸しし、DX推進スキル標準の5類型とスキルリストを参照しながらギャップを洗い出します。

育成面では、既存社員のリスキリングと中途採用・外部登用を組み合わせます。DX推進スキル標準は具体的なスキル項目も提示しているため、これをベースに研修カリキュラムを選定できます。

採用面では、標準を参考に職務記述書を作成し、求める人材像を明示します。また、評価・昇進基準にDX関連のスキル習得や成果を組み込むなど、人事制度の見直しも検討すべきでしょう。

現場担当者が担う役割:自己診断に基づくスキル習得と実践

現場でDX推進を担う担当者も、DX推進スキル標準を活用してスキルアップを図れます。標準を参照することで自分に足りないスキルを客観的に把握し、学習計画を立てる指針にできます。

育成で重要なのは、実務と学習を連動させることです。研修で習得した手法を実プロジェクトで試すなど、OJTと連携した取り組みが効果的です。

また、IPAの情報処理技術者試験も自己研鑽の目標として活用できます。ビジネスアーキテクト志向なら「ITストラテジスト試験」、セキュリティ要員なら「情報処理安全確保支援士試験」などが有用とされています。

まとめ:DX推進スキル標準で人材ギャップを埋め、組織変革を加速させよう

DX推進スキル標準は、企業のDX人材育成における羅針盤となる指針です。本記事のポイントを振り返ります。

  • DX推進スキル標準は、DX人材の役割とスキルを体系化した国の指針
  • 5つの人材類型(ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティスト、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティ)で構成
  • 共通スキルは5カテゴリで整理され、職種ごとに重点領域が異なる
  • 経営層・人事・現場の3者が連携して取り組むことが成功のカギ

DX人材ギャップの解消は一朝一夕では実現しません。しかしDX推進スキル標準を活用することで、自社に必要な人材像を明確化し、体系的な育成計画を立てることが可能になります。経営層・人事・現場が一体となって取り組み、持続的なデジタル変革を実現していきましょう。

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※一部短期間で簡易的な企業診断(無料)もご用意

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